エル シネマ大賞2018 ベスト10

今年のベスト1が遂に決定!「エル シネマ大賞2018」ランキング発表 | ELLE

第1位『万引き家族』

審査員コメント

安藤さくらはじめ、俳優の演技が素晴らしい。作品そのものの素晴らしさはもちろん、いまの日本映画界で社会に様々な議論を引き起こせる映画を作れるのは、是枝さんくらい。(渥美志保/ライター)

いないことにされている人々が、老女の年金で繋がり、家族になっていく。海水浴での樹木希林さんの姿は、屈指の名場面。これは是枝監督にとっての『生きる』なのかもしれない。(石津文子/映画評論家)

家族を描くことで現代社会の問題を炙り出し、「世間」への疑問も呈してきた是枝監督の集大成。俳優陣の演技はもちろん、ビルに隠れて見えない花火の音だけを家族で楽しむ場面の映像など全てがうまくかみあった。(伊藤恵里奈/朝日新聞記者)

是枝監督の映画のなかのお母さん、ミューズだった樹木希林さんの是枝作品最後の演技。病気とともに生き、「もうこれが最後」とぼやきながらも、ちゃんと作品に関わり続けた責任感と心意気、執念、いろんな思いに脱帽。(髙山亜紀/フリーライター)

今年歴史を作った作品。家族とは何か、絆とは何か? 人生を歩むヒントを与えてくれ、この先永遠と語られる名作。(ハリー杉山/タレント)

家族を描いた映画のなかでも永遠に残る名作! 是枝監督に心からの祝福を。(山内マリコ/作家)

第2位『スリー・ビルボード』

審査員コメント

悲劇には悲しみにくれる母親がつきものだがフランシス・マクドーマンドが演じる母親は良い意味で観客を裏切る。口下手で意地っ張りで不器用で…。閉鎖的な田舎町を舞台に、彼女を巡る人間模様の描写が素晴らしい。(伊藤恵里奈/朝日新聞記者)

残虐な事件そのものを描かずに展開する手法がまず秀逸。娘の仇を討つ母親の息つく暇もない行動力や当事者たちの心の機微をユーモア交えながら捉え、クライム・サスペンスでありながらも、ヒューマン・ドラマと呼ぶにふさわしい圧倒的な結末。言葉が出ないほど感動した大傑作。(伊藤なつみ/音楽ジャーナリスト/編集者)

フランシス・マクドーマンドの演技が素晴らしかった。彼女が看板を睨んでいる冒頭の1シーンだけで、娘を殺した犯人を憎みつつ、どこか自分自身にも許せない怒りを抱えてる母親の感情が伝わってきた。(井之脇海/俳優)

この映画を映画館で観ている時、「ここは笑う所か?」というシーンで外国人の笑い声が聞こえてきて、そうだ、彼ら彼女に比べればこの映画を深く理解するのは難しいだろうなと思った。それでも、字幕を通じて、悲しみや怒りを通り越した可笑しさを痛いほどに感じた。(尾崎世界観/クリープハイプ Vo&Gt)

いやはや。フランシス・マクドーマンド。怪演とはまさにこの事。〝鬼〟迫。最初から最後の最後まで緊張感が途切れない(最後の最後はある種のカタルシスが生まれるけど)すごいよこの演技力のぶつかり合い。完璧でした。それにしても本当に難しいテーマだなー。(川上洋平/[ALEXANDROS] Vo&Gt)

暴力や差別の連鎖という題材を描きながらも、最後のドライブでほのかな希望の光を感じさせてくれる作品。喜劇でもあり悲劇でもあり、簡単にジャンルわけできないところも素晴らしいです。(細谷美香/映画ライター)

第3位『君の名前で僕を呼んで』

審査員コメント

スティアン・スティーブンスの“ミステリー・オブ・ラヴ”が流れ出すや否や、本作唯一の揺れ動く視点のカメラが映し出す自然の緑と黒、流れ落ちる滝の白。その瞬間の戦慄。いくつもの80年代半ばのポップ・ソング。サイケデリック・ファーズが演奏する「ラヴ・マイ・ウェイ」という歌詞が1度目と2度目ではまったく別の意味を持つという、さりげない演出。すべてがどこまでも意図的で、どこまでもさりげない。(田中宗一郎/音楽評論家)

人生を変えてしまうような、青年と少年の運命のひと夏。男ふたりの恋を禁断ではなく、美しくもやるせない普遍的なラブストーリーとして描いたところが好き。父親の言葉の余韻にも浸りました。(細谷美香/映画ライター)

エリオという人間のすべてが好きだった。(松田青子/作家)

ジェームズ・アイヴォリーの細部に至る繊細な演出が、イタリアを舞台に、見事なハーモニーを現出させて、胸を揺さぶられる作品。思春期のちょっとした出来事で、同性を愛しても、けしてそれは重苦しいドラマではないとこの映画は語りかけている。ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーの美貌が、実に印象的だったし、この映画の後、ふたりとも引っ張りだこに。(村上香住子/作家・エッセイスト)

「モーリス」からここにくるまでのジェームズ・アイヴォリーのことを思うと、挙げずにはいられません。(よしひろまさみち/映画ライター)

第4位『ボヘミアン・ラプソディ』

審査員コメント

音楽系のドキュメンタリー映画が多い中で、クイーンの個性的な4人を俳優陣が演じるというだけでも不安だったが、デビュー時からのファンだった私が胸を熱くしたほど、ライヴシーンから逸話まで丁寧な作りで素晴らしい内容に。メンバーの協力で、フレディの真実が明かされたという意味でも貴重。(伊藤なつみ/音楽ジャーナリスト・編集者)

スクリーンに映っている彼らが伝説になる様を目撃しているようだった。音楽の話だけでなくセクシュアルな悩みや葛藤、心の揺れなど丁寧に描かれていた。試写会や映画祭以外で上映後に客席から拍手が起こったのは初めての経験だった。(井之脇海/俳優)

心の叫びをのせた歌と短くも永遠となった人生に慟哭。今年、最も泣かされた映画。(久保玲子/ライター)

目の前にあの伝説のバンドが蘇った。人生を変える傑作。QUEENはフレディだけではない、ジョン、ロジャー、ブライアンと共に生まれた家族。その人生の流れは最初から最後まで愛に溢れ、今年一の涙を自分は流してしまった。似てるだけではない、筋肉一つの形から眉の動き方まで本人と化した役者たちの情熱を感じるべし。(ハリー杉山/タレント)

最初は入れ歯が気になって仕方がなかったが、次第にフレディの孤独にどっぷり感情移入。差別に苦しむマイノリティを描くブライアン・シンガー監督の視点は『X-メン』シリーズから一貫している。ライヴ・エイドですっぱり終わる構成も潔い。(松浦泉/ライター)

第5位『アンダー・ザ・シルバーレイク』

審査員コメント

監督が「これは、私自身のロサンゼルス物語だ」と述べている通り、19世紀終わりから20世紀初頭にかけて登場し、のちのビートニクやヒッピーといったカウンターカルチャーへとつながる「ホーボー」、あるいはカウンターカルチャーの一部から大きく発展したニューエイジなどを映画の通奏低音としてロサンゼルスを描き切ったのが見事。またハリウッドを擁するロサンゼルスという側面を、過去の名画へのオマージュたっぷりに表現しているのも嬉しい。(青野賢一/ビームス創造研究所クリエイティブディレクター)

逆再生、1ドル札のメッセージ、音楽による洗脳……お金も仕事もないけれど陰謀だけは解ける様子がおかしいイケメン、サムから目が離せませんでした。サムが後を追う謎の美女、サラを演じるライリー・キーオも不吉なくらい華やかで印象的です。(辛酸なめ子/漫画家・コラムニスト)

小物使いや色彩に拘り、映画愛に溢れているこの監督が撮るダークな世界は最高。今回も不思議な映画体験をさせてくれた。「マルホランドドライブ」然り色々な映画へのオマージュを感じるが特に「欲望」とホドロフスキーの映画、特に「ホーリーマウンテン」を感じさせた。前作ほどの衝撃は無かったけど、プレスリーの娘ってこんな素敵な女優さんなんだと発見できたのは良かった。(中野光章/バーニーズ ニューヨーク セールスプロモーション チーフマネージャー)

『ビッグ・リボウスキ』や『マルホランド・ドライブ』の系譜に連なる、でもどちらにも似ていない謎のLAノワール。リンチのような思わせぶりがない即物的な演出がなぜか悪夢感を増す。『サイコ』のアンソニー・パーキンスに酷似したA・ガーフィールドとエルヴィスの孫をキャスティングするセンスはさすが。(松浦泉/ライター)

映像表現、役者、物語、全てが全てにアーティスティックで圧倒的だった! そこここに散りばめられた暗喩に込めたメッセージ性、オマージュ、そのインテリジェンスにも心が奪われて。あらゆる全方向から刺激を受けた作品でした。(シトウレイ/フォトグラファー)

第6位『ファントム・スレッド』

審査員コメント

1600年代のレース、おしみない生地、舞台背景の忠実さ、優雅さ……。作り手の日常、作りだす非日常と愛。ゆっくりと何度も見返したくなる1本でした。(中山路子/ミュベールデザイナー)

ゴシックでエレガント。好きなタイプの怖いラブストーリーです。地味な小娘なのに名優ダニエル・デイ・ルイスをあそこまで追い詰めたヴィッキー・クリープスもすごい。(山崎まどか/コラムニスト)

上流階級の女性に気に入られた仕立て屋と、彼のマネキンに採用され、それ以上を求める若い娘の目に見えない糸に操られる闘いは毒まで使う娘の勝ち。英国階級社会が内包するいやらしさがじわりと滲んで怖さを呼ぶ。(渡辺祥子/映画評論家)

第7位『レディ・バード』

審査員コメント

監督のグレタ・ガーウィグが好きで楽しみにしていたのですが実に彼女らしい「憎めないあの娘」的な作品になっていて、この人は天才だな!と確信しました。「フランシス・ハ」よりもこっちの方が彼女の伝記的な作品となっているとのことで、なんとも憎めない人なんだなという事が作品を通じて伝わってきます。なんとなく「ちびまる子ちゃん」を思い出したのは私だけでしょうか? 一つ苦言を呈するとしたら主演のシアーシャ・ローナンがモテない女子を演じるには可愛すぎるのかなと。(川上洋平/[ALEXANDROS] Vo&Gt)

女の子と女の狭間で何かとうまくいかなくて、不安で、何が嫌なのかよくわからない苛立ちに塗れた年齢をうまく描いていました。母親との葛藤も、わかりやすいものではないが故に多くの人に重なるのでは。(鈴木涼美/元AV女優・作家)

グレタ・ガーウィグらしい「わたしの物語」。でも見た人の誰もがそこに自分の物語を持ち込める、そのインティメイトなところが気に入りました。(山崎まどか/コラムニスト)

第8位『シェイプ・オブ・ウォーター』

審査員コメント

「自分を理解してくれる運命の相手は、どんな形でもこの世界に存在している」という一つの回答を与えてくれたような映画のラスト、そして二人の純粋で深い海のような愛に、何度見ても心打たれ涙を流してしまう。(アナイス/映画ライター)

異形のプリンスの登場に、今年、最も心がワクワクした映画。(久保玲子/ライター)

異端者(アウトサイダー)への温かな視点がギレルモ監督らしく、かといってインナーサークル内限定ではない普遍性を持つ愛の物語へと昇華させている点。浮世絵からの引用や登場人物の気分を表現するカラーパレットなどの細部まで凝ったビジュアル面はもちろん、社会的/時代的なテーマを盛り込むといったストーリーテラーとしての冴えにも磨きがかかり、SFファンタジーというジャンルを超えた傑作に仕上がっています。(山縣みどり/ライター)

第9位『オーシャンズ8』

審査員コメント

映画の最初から最後まで「女子にだって何でもできる」と言い続けている、いまこそ女子が見るべき映画。しかも痛快。サンドラ、ケイト、リアーナはじめ誰一人キャラが被らず、これまでのハリウッド大作の中で女子が担わされてきた、いわゆるきれいどころ、主人公の恋愛対象、おっぱいちゃん、みたいなキャラがひとりもいないのもいい。ダニーはやっぱり生きてた、みたいな感じでシリーズ復活の予感も。(渥美志保/ライター)

かっこいい女性映画。痛快で、画面の色も華やかでかっこいい。やはり、女性の表情には物語があり、奥深い。(清塚信也/ピアニスト)

王道なストリーのレディーバージョン。メットガラを舞台にゴージャスで爽快。女性の力強さがスカッと気持ちの良い作品でした。(中山路子/ミュベールデザイナー)

第10位『クワイエット・プレイス』

 

審査員コメント

どんなに恐ろしくても声を出せないという絶望を極めたシチュエーションにヤラれた。無音のまま引っ張りに引っ張りまくって果てに、盛大に花火が打ち上げられるクライマックスには震えっぱなし!(平田裕介/映画ライター)

音響設備が優れていることは映画館鑑賞の利点。爆音上映などが注目される今、本作は<無音>もまた利点であると悟らせる。そして映画はそもそもサイレント映画として始まり、台詞がさほど必要ない事も再確認させる。(松崎健夫/映画評論家)

ジョン・クラシンスキーの監督としての才能に驚かされました。ワン・アイデアのSFホラーと言われたらそうだけど、舞台設定や家族メンバーの構成、キャスティングとほぼ完璧。低予算とはいえ、あまり登場しないクリーチャーの造形や特撮といった重要な部分にも手を抜いてないためチープに見えないのも素晴らしい!スクリーンに向かって何度叫び声を抑えたことか。ホラーは苦手だけれど、この映画は本当に何度も見返したい。(山縣みどり/ライター)

エル シネマ大賞

今年で4年目を迎えた“女性のためのベスト映画”を選ぶ、エル シネマ大賞。映画評論家や文化人、エル・エディターほか、約60名が審査員となり、独自の目線でベスト作品を選出。

Posetd by ELLE 2018年11月30日