第7回TAMA映画賞 作品賞は「海街diary」と「きみはいい子」

第7回TAMA映画賞 2015年 受賞作品・受賞者一覧

最優秀作品賞

『海街diary』(是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同)

家族や友人との別れや死によって新たな関係が築かれていく時の移ろいを、四姉妹と街の人々の日々の営みをとおして描き、 人生がほろにがくも素晴らしいことを深く響かせてくれた。

『きみはいい子』(呉美保監督、及びスタッフ・キャスト一同)

現代に生きる痛みと微細な心の震えを多面的に描くことで登場人物に寄り添い、彼らが他者との関わりを通して閉塞した日常に小さな光を見いだすさまは、等身大の救いとなる一歩前に踏み出す力を観客に与えてくれた。

特別賞

塚本晋也監督、及びスタッフ・キャスト一同(『野火』)

戦場で極限状態に置かれた人間の、本能と理性のせめぎ合いを臨場感あふれる表現で描き出し、戦争体験のない観客にも真の恐怖や痛みを追体験させた。
平和を誠実に希求しながら生きる礎(いしじ)として幅広い世代に強く深く永く刻まれる作品となった。

最優秀男優賞

永瀬正敏(『あん』『KANO~1931海の向こうの甲子園~』)

役柄を心と体で受け止め、まさにそこに生活している人として演じきった。
民族・病苦・差別などの壁を乗り越えて互いに敬意を払って生きていく姿の美しさを身をもって観客に示した。

綾野剛(『新宿スワン』『ピース オブ ケイク』『天空の蜂』『ソレダケ / that’s it』『S-最後の警官- 奪還RECOVERY OF OUR FUTURE』)

どの役柄にも常に全力投球することで、重さと軽さのバランスを的確にコントロールし、時に屈託のない笑顔をのぞかせ、時に研ぎ澄まされた狂気も感じさせる幅広い表現力と魅力をたたえた俳優へと飛躍した。

最優秀女優賞

樹木希林(『あん』『駆込み女と駆出し男』『海街diary』)

作品に添いながら、どの役においてもふさわしい輝きを放ち、ふくよかさとおかしみと希望とを私たちに感じさせてくれた。
そして、どのような状況に置かれていても、この世に生き、存在することの素晴らしさを伝えてくれた。

綾瀬はるか(『海街diary』)

鎌倉の日本家屋に住む四姉妹の家族の長としての凛とした佇まいや立ち居振る舞いの美しさは昭和の女優の面影を漂わせ、身近な人の死を受け入れることによって自己を内面から変える女性の成長を演じきった。

最優秀新進監督賞

岨手由貴子監督(『グッド・ストライプス』)

結婚を目前にした男女の日常を独創的な視点で切り取ることで、完璧ではない人生の愛おしさを描き出し、ドラマチックでない日々のなかに幸せな瞬間があることを気付かせてくれた。

松居大悟監督(『私たちのハァハァ』『ワンダフルワールドエンド』)

「今」という瞬間を夢中で駆け巡る10代の少女たちの姿を、身勝手さや儚さを交えながら等身大の目線で描き、瑞々しくも骨太な青春映画を誕生させた。

最優秀新進男優賞

中島歩(『グッド・ストライプス』)

結婚という人生の大きな節目を前にした青年が、逡巡しながらも少しずつ歩みを前に進めていくなかで見せる表情の移り変わりや佇まいに目を見張った。
今後、ますます深く役柄を掘り下げ、豊かな表現力を磨いていくに違いない。

野村周平(『愛を積むひと』『日々ロック』『ビリギャル』『台風のノルダ』)

内面の葛藤や周囲へのいらだちを抱えた少年期のトンネルを抜け青年へと成長していく姿を真摯に演じた。
そのひたむきさは観客に強い印象を残した。

最優秀新進女優賞

広瀬すず(『海街diary』『バケモノの子』)

桜並木のトンネルを自転車で駆け抜けるシーンの爽快感、おでこをあげてドリブルするサッカーシーンの躍動感、少女のかけがえのない輝きをスクリーンに表現した存在感は、映画女優としての未来を感じさせた。

杉咲花(『トイレのピエタ』『愛を積むひと』『繕い裁つ人』)

『トイレのピエタ』において、余命幾許もない青年にストレートな言葉を投げつけながら無鉄砲に思えるほど全身全霊で生の素晴らしさを伝えようとする少女の姿に胸を強く打たれた。

Posted by 映画祭TAMA CINEMA FORUM | TAMA映画フォーラム実行委員会